アレクサンダーテクニーク

「正しい感覚」を得ようとしてはいけない理由


こんにちは、川浪です。

先日、チェロの方にレッスンしていた時のこと。

その方は、弾いてる時に、無意識に真正面を向こうとしていました。

チェロは、身体の中心より左側に、楽器を構えます。

ですから、身体を真正面に向いて弾くというのは、あまり効率的ではありません。

少し左を向く方が、身体の構造には合っています。

(厳密に言うと、脊椎を左に回旋させるということです。今回の趣旨は別の話なので、この辺りは割愛します)

それで弾いてもらうと、弾きやすくなったものの、ずいぶん左を向いているように感じる、とのこと。

ところが、鏡で弾いてる姿を確認してもらうと「思っていたほど、左を向いていない。むしろ、ほとんど正面を向いているように見える」とのことでした。

これは、レッスンをしているとよく起こることです。

自分の感覚と、実際に起こっていることが、ズレているのです。

なぜこのようなことが起こるかというと、自分の感覚は、普段の自分の身体の使い方が、基準になっているからです。

今回の場合は、ふだん真正面を向いている状態が基準となっており、それより少しでも左を向くと、ずいぶん左を向いているように感じたのです。

実際には、最初に述べた通り、チェロは左側に構えるので、むしろ左を向いたほうが、見た目には正面に構えているようになります。

ほとんどの方が、演奏を改善しようとする時に、自分の感覚を頼りにします。

正しい感覚が得られるのが、よい奏法だ、と。

ところが、ここに大きな落とし穴があります。

「正しい感覚」とは、とどのつまりが、ふだんの自分の癖です。

正しい感覚を得ようとする限り、自分の癖を手放すことは出来ません。

自分の癖を手放すためには、客観的事実にもとづいて、身体の使い方を見ていく必要があります。

もちろんレッスンに来れば、僕の視点から、客観的にあなたの身体の使い方をお伝えしますし、そうでなくても、解剖学を学ぶことであったり、鏡やビデオで、自分の姿を見ることは役に立ちます。

ぜひ試してみてください。