アレクサンダーテクニーク

単音楽器で二声をどのように演奏するか


こんにちは、川浪です。

クラリネットの方のレッスンで、あるエチュードを上手く吹きたい、というリクエストがありました。

そのエチュードは、一小節の頭に、低音部が一音、その後、高音部の旋律があり、同じ音形が続いていくものです。

(言葉で説明するとわかりにくいが、お付き合いください^^;)

・低音部も高音部も、もっと響きを増したい

・低音部と高音部を、二人で吹いているように分けて吹きたい

というのが、その方のリクエストでした。

もちろんいつものように、身体の使い方云々の話もしたのですが、今回はその話は割愛します。

その方にやってもらったのは、まず低音だけを吹いてもらうということです。

低音は、譜面上は小節の頭に16分音符一個分しかありませんが、今回は一小節のあいだ、伸ばして吹いていただいて、低音の動きを確認してもらいました。

今度は、高音だけ取り出して、吹いてもらいました。

最後に、譜面通り吹いてもらうのですが、先ほど吹いたように、低音は一小節伸ばしている気持ちで、吹いてもらいました。

その結果、低音、高音がより明確に分けて聴こえるようになり、それぞれの響きも増しました。

それまでも、低音、高音を分けてと吹こうとしていたわけですが、本来、この二つはバラバラのものではありません。

あくまで推測ですが、このエチュードを作曲した方の頭のなかでは、ベースラインが流れていて、その上に旋律が流れてのではないかと思います。

それをクラリネットという単音楽器に落とし込んだために、譜面上は低音が16分音符一つになってしまったのでしょう。

それを譜面通り吹いていては、作曲者の意図とは異なる演奏になってしまいます。

もちろん、クラリネットのような単音楽器では低音を伸ばしながら、旋律を吹くということはできません。

ここで大事なことは「低音を伸ばしている意図を持って吹く」ということです。

「なんだ精神論か」とは思わないでください。

僕が何度もお伝えしていることですが、アレクサンダーテクニークの前提として「頭で考えたとおりに身体は動く」と考えています。

演奏とは、身体を使って、音楽を奏でることです。

どういう演奏をしたいのか、そのイメージが明確であればあるほど、身体もそのために必要なことをしてくれます。

今回の場合であれば、低音と高音を分けて吹きたいということでした。

であれば、低音は本来どのような役割をもっているのか、それを明確にして吹く、ということが、とても重要になってきます。

これは「単音楽器で二声を演奏する」に限った話ではありません。

素晴らしいドラマーであれば、ドラムソロでコードが聴こえてくることがあります。

太鼓の音程をチューニングして、和音が聴こえるようにする、という意味ではありません。

コード感を感じさせるフレーズでソロをする、ということです。

また、世の中には、ピアノの一音でクレッシェンドができる、という人もいます。

どちらも物理的には不可能ですよね。

しかし、実際にそう聴こえるという人がいるのも事実です。

ではどうすればそのような演奏ができるのか。

それは「意図を明確にして演奏する」ということだと思います。

前回の記事でも書きましたが、よい奏者であればあるほど、演奏中に様々なことを意識しています。

その中の一つして、いつもお伝えしている身体のことや、今回お伝えした、演奏する意図を明確にする、ということを意識してみてください。

余談になりますが、僕は元々、自分のことを身体の使い方の専門家と捉えていました。

そのため、レッスンで取り扱うのは、身体の事だけ、音楽的なことは各自にお任せします、というスタンスでした。

しかし、ある時期から、音楽家にレッスンする以上、僕自身も音楽的な理解を深める必要があると感じ、さまざまなレッスンに通い始めました。

現在、ピアノ、ギター、ボイストレーニングに通っていて、今年はもう一つ楽器を増やそうと思っています。

(やりすぎな気もしますが、気合と根性で乗り切ります。笑)

これからは身体の使い方も含めた、トータルな音楽指導者として、よりよいレッスンを提供すべく、今後も日々研鑽に努めます。