アレクサンダーテクニーク

その奏法おかしくない?


こんにちは、川浪です。

声楽の方にレッスンしている時のこと。

その方が、声をだす時に、必要以上に「舌」に力を入れていることに気づきました。

こういう場合って、二種類あるんですね。

完全に無意識でやっている場合と、何らかの指導に基づいて、意識的にやっている場合です。

何らかの指導というのは、先生から「〇〇しなさい」と指示されて、それを意識的にやってる場合です。

ですから、レッスンで極端な傾向を見たときには、「こういう傾向がありますけど、何か意識的にやっていますか?」と聞くことがあります。

今回の場合は、「先生から舌を下げた状態を維持するように」と言われていたそうです。

聞くところによれば、声楽の有名な教則本にも、そういう指示が載っていて、声楽界ではある程度ポピュラーな指導とのこと。

ところが、本人は、どうもそのやり方は、しっくり来ていないそうです。

僕もその指示には疑問があります。

というのも、発声するときに、舌の動きというのは、とても重要な役割と持っているんですね。

例えば、発音によって舌の位置は変わります。

単純に「あ、い、う、え、お」と言っても、唇やあごの位置だけなく、舌の位置も変わります。

子音だとさらにはっきり分かりますね。

「あ、か、さ、た、な、は、ま、や、ら、わ」

と順番に言えば、舌の位置が変わるのが、はっきり分かるでしょう。

さらにさらに、同じ「あ」の発音でも、音程を変えると舌の位置が変わります。

つまり、、、

歌をうたう時に、舌の位置を一定の場所にキープするなんてありえないんです。

ではなぜ、そのような指示がまかり通るのか。

その理由は、身体の感覚を表現するとき、言ってることとやってることが違う、というのが多々あるからです。

これを始めに言いだした人は「舌を動かしていない」という感覚だったのでしょう。

しかし、先ほども説明したとおり、実際にはそんなことはありえないと思います。

まぁ、実際見てみないとわからないですけど、ほぼ間違いないでしょう。

次に、そういった指導を受けた人の中で、たまたま上手く歌えるようになるひともいれば、上手く歌えない人もいるわけです。

上手く歌えるようになった人は、その状態が、舌を動かしていない状態だと勘違いするわけですね。

そして、その人が、今度は教える立場になり、、、

ということが、延々と繰り返され、よくわからない伝統が出来上がってしまうのだと思います。

これって、声楽に限らず、あらゆる楽器のレッスンで起こっています。

これをお読みのあなたも、なんとなく心あたりがあるのではないでしょうか。

では、一体どうすればいいのか。

感覚的な表現に頼るのではなく、きちんと身体の仕組みを知り、それに基づいた奏法をやりましょう、ということです。

例えば、歌う時の舌の動きを撮ったMRIの動画を見てください。

こんなに舌が動いてるって知ってましたか?

医学の進歩で、人間の身体はこうなっている、というのは、かなり分かってきています。

もちろん、まだまだ分からないこともたくさんあるでしょうし、これまでの常識が覆される可能性だってあります。

とはいえ、先人が積み重ねてきた知識、知恵を音楽家のあなたが活かさないのはもったいなさすぎます。

まだまだ演奏する上での身体の使い方は、経験と勘だけに頼った、根拠のない指導がまかり通っているのが現実です。

もしあなたが演奏していて「この奏法はしっくりこないな」と思ったときは、ぜひ、そのもとになる身体の使い方から考えてみてくださいね。